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篠田 節子 『薄暮』

薄暮

著者:篠田 節子

薄暮

読んだきっかけ:
篠田さんの作品が好きだったので、図書館で見つけて何気なく手に取った一冊

感想:
いやぁ、篠田さんの作品は結構好きで、何冊か読んだけれど
没後とある人気タレントのエッセイをきっかけに脚光を浴びることになった”閉ざされた郷土画家”とその妻の生き様と情念が、絵画や地域復興など様々な思惑と絡みながら描き出される
この人の作品の中では『ゴサインタン〜神の座〜』を読んだときのようなインパクト

ミステリーか、と思わせる一面をも呈しながら骨太い社会小説、人間観察の優れた作品だと思う


画家にしろ、演奏家にしろ、作家にしろ
売り出しのマネジメント次第で、人心を掌握するかどうかに差がつき(勿論、どんなに巧みに人心をくすぐり鳴り物入りで売り出されても、そこに眞のチカラがなければ、人が離れるのもまた早いけれど・・・・)

絵なんて、所詮、自分が良いと思っているものが一番良いんでね。

という風呂敷画商の言葉が真理を突いていると思う
審美眼ほど曖昧なものはなく、
”名だたる”評論家が誉めちぎり、何千万と値のついたものが素晴らしい、と思う人には
どんなに魂の篭もって力のある絵も、無名の画家のものは無価値なものだろうし
その絵にどんなエピソードがあろうが、画家にどんなエピソードがあろうが、それをドラマティックに前面に押し出されたところで心を動かされることのないものもある
そういうことを逆手にとって画商の暗躍するコレクターの世界
審美眼や美的センスには皆目自信がなく、単に感覚だけで芸術作品の好き嫌いを決め、自分ではそれらを所有し日々眺め暮らそうという発想もないアタシには無縁だけど、だからこそ窺い知ることができて面白い

また、元公務員の篠田さんだからこそ書ける、公務員の体質や心情も、ちょっと他の小説ではあまりお目に掛かれないもので面白くもあり

すぐれた芸術作品は、しばしば汚濁と混沌に根を下ろし、泥酔の上に花開く

と、極端な暮らしぶりを、すぐれた芸術家ならではと看做してはいるけれど
一般人の生活、心情の中にも

夫として、妻としての役割を果たした上で、互いの守備範囲への無関心さがあるからこそ、夫婦はやっていける

というのは普遍的な真理として根を下ろしているのだろう

人は人を縛ることは出来ないし
人は決して誰かの作品ではない

芸術とは、夫婦とは、人としての”役割”とは
どんな平凡な人間の生活の中にも投げかけられる問いへのひとつの答えの形が描き出されているといえるかもしれない

おすすめポイント:
絵の好きな人も、ミステリーの好きな人も、恋愛小説の好きな人も、様々な角度から楽しめると思います

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